脱スピリチュアル・脱自己啓発

アメブロ『脱スピリチュアル・脱自己啓発』の改訂版。スピリチュアルにハマる…自己啓発セミナーに通い続ける…で、幸せは手に入るのか?

1-3 心の癒し・救いにはムーブメントがある

 仏教の普及により日本人の心が安定したと言いたいところですが、やはり神はそう簡単に恒久の平和をもたらしてはくれません。東大寺の大仏が作られたのは飢饉や疫病から人々を救う祈願のためです。社会不安が人々の心を大きく揺るがし、その都度に精神性、宗教性の濃いイベントが催されてきました。


 日本の仏教の歴史において見逃せないのが、平安末期から鎌倉時代に次々に生み出された新しい仏教です。主な6宗である浄土宗、浄土真宗時宗、法華(日蓮)宗、臨済宗曹洞宗など、現在の日本人にとって最も身近な仏教が新しい宗派として生まれました。では、なぜこの時期に一気に新仏教が生まれたのかを考えてみましょう。
 最も大きな影響と考えられるのが、釈迦の死後500年後から徐々に仏教が崩壊していくといわれた末法思想です。さらに、平安時代が終焉し武士の登場による戦乱の世への突入が重なり、人々の心が大きくかき乱されていきました。国内の秩序が乱れ、SOSを出す人が続出し、「すぐに」「簡単に」「誰でもOK」な、いわゆるコンビニエンスな仏教が求められました。ただ念仏を唱えるだけで救われるといった浄土宗などの教えから分かるように、文字が書けなくてもいい、修行を積まなくてもいいという、人に優しい教義にどれだけ多くの人が救われたことでしょう。
 つまり、鎌倉新仏教が生まれたのも、社会不安から救いを求める人々のニーズが大きな要因だと考えられます。混乱の世の中。それまでの価値観ではうまく生きていけない。不安が募るばかり、なんとしても救われたい。幸せに生きていきたい…。どの時代であれ人々が抱く永遠の願いです。