脱スピリチュアル・脱自己啓発

アメブロ『脱スピリチュアル・脱自己啓発』の改訂版。スピリチュアルにハマる…自己啓発セミナーに通い続ける…で、幸せは手に入るのか?

2-5 自分の責任を放棄しスピリチュアルで生きることを決めたE子さん

『自分らしく』という言葉にこだわっている人がいます。『自分らしく』にどうしても惹かれてしまうのは、それまでの人生が自分らしくなかった人だからです。では、『自分らしくない』とは、どのようなことを言うのでしょうか?
この問いを掘り下げてみると、

「本音で生きてこられなかった」「周囲の顔色ばかりうかがって自分を押し殺していた」という自覚だと思います。

では、そのような人に「本音」をたずねてもなかなか答えは返ってきません。なぜなら、自分の本音すらよく解らないからです。


世の中では「キラキラ起業女子」や「ママの企業家」なる言葉も流行りました。これは、スピリチュアル商売や自己啓発セミナーに多く影響を受けていると言えます。

自己啓発セミナーに関しては後の章で詳しく話しますが、端的に言えば

「唆(そそのか)された」のです。

それは非常に安易なプロセスですが、アイデンティティーがしっかり確立できていない人にとって次のような魅力的なキーワードですぐにその気にさせられてしまうのです。

(好きなことで生きていける)(やりたいことだけやればいい)(あなたの使命)(自分をもっと愛して)(自由に生きる)(あなたはあなたのまま)・・・

 

これらの言葉は、自己肯定感の低い人にとって格好の口説き文句です。この言葉で目覚め、自分がそれまで築いてきたものをいきなり手放して、心地良いもの、気分がいいことだけに身を置こうとしますが、それはすべて幻想です。

なぜなら、アイデンティティーの確立がなされていないままに、スピリチュアルやスピリチュアルにからめた自己啓発メソッドを叩き込まれてしまうと、アイデンティティーそのものがスピリチュアルだと錯覚するからです。

自分の生きる道があったのに、その道を歩いてこられなかった。。。こうした悔恨の念が、スピリチュアルに走らせます。

アイデンティティーの確立無くして自分の歩む道など見出せません。さまざまな経験、迷ったり失敗したりしながら行きつく道だからです。

ところが、迷っていた自分を救ってくれたスピリチュアルそのものが自分の歩むべき道だと思うのは少しおかしいと思いませんか?

 

スピリチュアルというものは、自分の道を歩む中で力にはなってくれることもあるかもしれませんが、スピリチュアルそのものが自分の道になってしまうということは、似ていますが大きく違います。

 

神社に出掛けてお守りを買いました。

すると、あなたの願いが叶った!

次の日から、あなたはお守りづくり職人に転職しますか?

 

 

スピリチュアルカウンセラーやヒーラーや講師になったとしても、結局、自分の本質にアプローチしていないので、不安はけっして拭えません。常にスピリチュアルに関わっていないといられなくなった結果が、スピリチュアルで商売をするという姿になっている人がどれほどいることか…。

 

無料ブログでスピ系や自己啓発系の情報を発信して「お客さん、来てください!」と商売している人たちが(いいね)を押し合い、結局、互いにお客さんになり合っています。

 

泣いている子がいました。

その子はヨシヨシッて慰めてくれる人と出会います。

その人に救われて、その子はその人についていくことにしました。

見回せば、自分と似たような境遇の人があっちにもこっちにもいます。

「仲間だ!」と集って、我々は魂のファミリーだと言い出します。

 

やがて、その子は、自分の道へと歩き出すことをうっかり忘れて、

いつまでもいつまでも、仲間の輪の中で、「理解し合う同士」だと安らぎの場に居続けようとします。それを、「アセンションした仲間」だと言われると、もう抜け出せません。

妄想と思い込みに浸りながら、結局、慰め合いの世界に浸り続けます。

 

【ケース5】自分の責任を放棄しスピリチュアルで生きることを決めたE子さん

 

E子さんの夫は精神的に弱く、ひとつの仕事が長続きすることが無く、E子さんは常に不安を抱いていました。幸い夫の実家で同居しているので、住宅ローンの心配はありません。つまり、深刻な金策をすることは無かったのですが、子供は中学生でますますお金がかかります。そのような部分を自分が仕事に出て支えてきました。

夫への憤りを感じながらも、夫の実家に住むことができている遠慮もあり、メンタルの弱い夫に対して強く非難することはできませんでした。精神的にまいってしまうと会社を辞め療養し、元気になると仕事を探すということを繰り返してきたのです。

『お金の不安から解放されるセミナー』に参加したことが、E子さんがスピリチュアルに出合ったきっかけです。金銭的な不安は、お金に対する執着が引き起こしていると言われ、高次元の存在から、自らの執着を手放すためのセッションを受けたのです。

するとE子さんはお金に対する不安が少しずつ薄らいでいるように感じました。(執着を手放すこと)([夫を]許すこと)…こうしたセッションによって、E子さんは少しずつ、気持ちが楽になり、セッションで勧められた瞑想によって(高次元の存在)に接触できると自覚するようになりました。

 

1年後、E子さんは勤めていた近所の会社の事務職を辞めて、スピリチュアルカウンセラーとして開業することを決めました。天使たちにアクセスして、クライアントさんを苦しみから(解放する)ことをうたっていました。

ところが、お客さんは思うように集まりません。夫は相変わらず、休職や転職を繰り返します。E子さんの経済的な不安がまた膨らんできました。

E子さんのスピリチュアルの師匠だという人に相談すると、あるイベントを勧められました。それは、西日本のとあるパワースポットへ行き、浄化を行うというものでした。

E子さんは、迷わずイベントに参加しました。そこで、大きな出会いをします。

E子さん曰く、「彼はツインソウル」だと。

同じイベントに参加していた男性と恋愛関係になり、E子さんは夫との離婚を決意します。男性は独身。E子さんに一目ぼれしたそうです。

E子さんは離婚し、中学生の子供を夫のところに残したまま男性の元へ行きました。男性はスピリチュアル的に話が合うので、E子さんにとってとても優しいよき理解者です。男性は建築士として独立していたため、E子さんはお金の不安もなく仕事をする必要もありません。

残してきた子供のこともあり、内縁関係を続けていますが、いずれ結婚を考えています。

 

[E子さんの生い立ち]

E子さんが生まれた時、商売をしていた実家は繁盛していて、恵まれた環境でした。商売をしていたので、家には知らない人がしょっちゅう出入りしていて、もともと繊細だったE子さんにとってはとても苦痛な状況だったと言います。穏やかにゆっくり過ごす時間が少なく、来客があればすぐに呼び出されお客さんにお茶を出したり、話の相手をしたりすることを強いられました。部屋で穏やかに過ごすことができなかったE子さんが騒がしい家の中で生き残るために、頭の中で自分の思い描いた世界に浸ることを覚えたのでした。

E子さんが小学校3年生の時、親の事業が倒産して、一家離散の状態になりました。両親は離婚。母に引き取られたE子さんに、穏やかな日常がやってきましたが、母は一日中働きに出ていて、E子さんは常にひとりぼっちでした。

ある日、E子さんの所に、かつて親の会社で働いていた男がやってきました。あいにく母が仕事で留守だったのですが、顔見知りと言うことでE子さんは家に招き入れてしまったのです。そこである事件が起きました。子ども相手のいたずらです。今ではわいせつ事件とされるでしょう。幸い、E子さんはケガをすることはありませんでしたが、恐ろしい体験をしたのです。

このことは母親には言っていません。言えなかったのです。

母が常に金の工面で苦労している姿を見ていたので、これ以上、心配を掛けたくなかったのです。やがて、E子さんは大人になり、不動産会社の事務員として就職し、親の元を離れ独立しました。ところが、この会社が今でいうブラック企業で、早出や残業など当たり前。毎日クタクタになって働いていたところに、ふとお客さんとして表れたのが、離婚した夫です。親元を離れて1年もしないうちに、結婚を機に会社を辞めました。

 

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E子さんが結果として、今、幸せに生きているならそれで十分でしょう。ただし、スピリチュアルからは離れられないままですが。

夫との離婚は仕方ないとして、子供を手放せる勇気に驚きですが、(スピリチュアル)がそうさせたのです。

「離れていても繋がっている」「愛の波動を送り続ける」…そんなことを自分に言い聞かせて、E子さんは離婚して一人で出ていきました。もちろん、思春期を迎えた子供ですから、本人も(自分はここに残る)と言ったその言葉を尊重したそうですが、見ず知らずの男性の元へ行く母に、思春期の男の子がついていくはずもありません。

 

結局、今もE子さんは男性とスピリチュアルという共通項で繋がりながら、スピリチュアルに心を奪われたまま生活しています。本人たちが(ツインソウル)だと感激してしまったのも仕方ありません。出会うべくして出会ってしまったのかもしれません。

 

ただひとつ、大事なことが見えていることに気づきませんか?

E子さんは苦しくなると男性に逃げるのです。過去のブラック企業の時も、そして現在のパートナーの時も…。本人は全く気付いていません。が、どちらの場合も、男性側からのアプローチで二人の関係が成立しています。

 つまり、自分で決めて生きていません。

 自分のアイデンティティーも確立できていない状態で(自分らしく)や(自分の道)など明確になるはずはありません。自分らしく生きたいのであれば、自分のアイデンティティーの確立が最重要課題です。大事なプロセスを無視すれば問題の本質を見失うだけです。

自分でそれまで選んできた人生から、大きくそれてしまうことも容易くできてしまうのがスピリチュアルという名のもとの洗脳なのです。

 

自分のアイデンティティーに何枚もの皮をかぶせていき、「幸せになった!」「自分を取り戻せた!」と思い込んでも、それは誰かが教えてくれたメソッドの受け売りをしてるだけとうことに気づかねば、迷宮に迷い込んだままです。現に、E子さんはときどきメンタルのバランスを崩し、その問題をスピリチュアル的に解釈しては、スピリチュアル商品で解決しようとしています。自らもスピリチュアルセラピストと言っていながら、E子さん自身がスピリチュアルセラピストに頼って生きています。結局、男性の親にはE子さんとの結婚を反対されていて、入籍に至っていません。男性自身も家族と疎遠になり、親を捨てた状態になってしまいました。

 

E子さんに教えたスピリチュアルは、E子さんに何を伝えたかったのでしょう。

誰かが教えてくれたメソッドがE子さんのアイデンティティーそのものなのでしょうか?

 

きっと、スピリチュアルや自己啓発にハマった自分の弱点や、いつまでもいつまでも縛られることにも気づかず、スピリチュアルを追い求めて生きていくのです。

 

それを遊興として味わうなら楽しいことです。しかし、大事な家族や生き方も大きく変えます。スピリチュアルに傾倒してしまうと人生が変わります。本人はその選択に対して懸命に「正しい」と言い聞かせ、幸せをアピールしますが、どこか悲しい。どこか辛い。。。

そういう芸能人さんが最近、テレビに出演されていましたね。

 

スピリチュアルにアイデンティティーを奪われるということを、しっかり考えてみてください。