脱スピリチュアル・脱自己啓発

アメブロ『脱スピリチュアル・脱自己啓発』の改訂版。スピリチュアルにハマる…自己啓発セミナーに通い続ける…で、幸せは手に入るのか?

2-3 事例3 ヒーラーに転身したC子さん

スピリチュアルなことに興味を持つきっかけは人それぞれですが、多くは(悩み)や(苦しみ)の中に居るときに、その脱出や解放のためにスピリチュアルが利用されています。

つまり、今の自分に納得していて自分で自由に選択して生きている、いわゆる自己肯定感が満たされている人はスピリチュアルにすがりません。

これがどういうことを意味するのか、よく考える必要があります。

 

人は悩み、苦しみの中に居る時、平常心とフラットな物事の見方や正常な判断を持ち合わせることが困難です。

何かに救いを求めたい、答えが欲しい時、その人の弱点が大きく作用します。

 

スピリチュアルの論理の常套句、

『あなたはそのままの自分でいい』

『自由であるために生まれてきた』

『自分にYESを出す』

は、とても耳心地の良い言葉ですが、

その言葉を受け取るタイミングによっては、悩んで苦しみ("我を見失っている状態のあなた”のままでいい)と勘違いする恐れがあります。現に、そこからスピリチュアルにハマり、さらに自分を見失っている人がどれほどたくさんいるでしょうか。

このような現象をある意味[憑りつき]なのではないかと私は思っています。

弱って自分自身が良くわからなくなっている状態に、他者の[偏った論理]がインプットされて、その論理にすがり、その論理が真理だと思い、今までの自分を(あれは本来の自分ではなかった)と否定し始めたのであれば、それは憑りつきと同じ状態です。

スピリチュアルにハマり、いきなり変わってしまった人が身近にいれば、このことがよく解るでしょう。

 

【ケース3】スピリチュアルに目覚めて天使になったC子さん

C子さんは短大卒業後、保育士として働いていました。もともと優しい性格で、面倒見がよく、子供の気持ちが分かり、多くの保護者から信頼されていました。

そんなC子さんは結婚後、まもなく子供が生まれたので、仕事は「またいつか」と辞めて、専業主婦になりました。

保育士時代の評判から「自分の子育ては楽しいだろう」と思っていたC子さん。いざ、自分の子育てが始まると思い通りにいきません。我が子はいわゆる"育てづらい子”でした。

夜泣きが激しく多動で言うことを全く聞かない。同じ月齢の子供がいる場所に連れて行くと乱暴で迷惑をかけるばかり。発語が遅く、言葉が通じず、癇癪もちで、C子さんは疲れ果ててしまいました。

保育士時代にうまく子供に向き合えていたという自信が逆にC子さんを苦しめて、(我が子がこんな状態なのは自分の子育てのせいなのではないか?)と自分を責めました。

子供が幼稚園に通うようになると、子供同士のトラブルで心を痛めることが増え、ママ友たちと会うことに恐怖感を持ち、C子さんは対人恐怖とうつ病を患いました。

子供の面倒は実家の母親に助けてもらいながら、なんとかこの苦しい状況から脱したいと、インターネットで検索して見つけたのがスピリチュアルカウンセリングでした。

 

『あなたは、あなたのままでいい』『そのままでいいのです』

そんな言葉をスピリチュアルカウンセラーに言われて、C子さんは苦しい自分がまるごと慰められたようで涙を流しました。

さらにスピリチュアルカウンセラーはC子さんにこんなことを言いました。

(あなたのお子さんはインディゴチルドレン。それまでの世の中の概念を大きく変えるために生まれた特別な子供なのです。あなたは、そんな特別な子供をこの世に送り出した素晴らしい人なのです)

こうしてC子さんは、スピリチュアルの世界に傾倒していきました。

 

数年後。

C子さんは自らをヒーラーとして、自宅の一室をヒーリングサロンにして開業しました。スピリチュアルにハマったC子さんは、ありとあらゆるスピリチュアル系のセミナーへ行き、資格を取りました。それは、海外にまで。やがて、自らを天使と称して、高次元からの存在にアクセスし、チャネリングによってクライアントへのメッセージを下ろすという方法のスピリチュアルカウンセリングを行うようになりました。

やがて、C子さんはスピリチュアルな世界を表現するパフォーマンスに興味を持ち、カウンセリングだけでなくアーティスト活動にも精を出しています。

 

彼女は無料のブログやホームページを使って集客し、出会った人とSNSで繋がって、スピリチュアルの世界で知り合った仲間と集い、「幸せ」のメソッド発信し続けています。

 

そこまでは良くありがちなパターンです。このように、自分の困難からの脱出をスピリチュアルに求め、結局スピリチュアルで稼いでいくことになった人が、どれくらいいるでしょうか?

C子さんは心底優しく、思いやるがある人です。「人のために役立ちたい」という気持ちが、スピリチュアルカウンセラーへの原動力になったのかもしれません。

問題は、彼女が思慮深くないことです。

心身ともに弱ったクライアント、健康問題を抱える人が来ると、波動を高くするグッズや食品を勧めます。その多くは、紹介制でしか購入できない高額商品(いわゆるネットワークビジネス)です。

彼女の行うセッションやヒーリングもなかなかの値段です。

藁をもすがる人たちにとって、それは藁ではなく救いになるのかもしれませんが、そうした人たちを増やし、状態や状況が悪化すると「好転反応」と言う。

 

好転反応]という言葉が使われ方によっては、非常に危険性が高いものであることを、C子さんは配慮していません。

 

[C子さんの生い立ち]

3人きょうだいの末っ子に生まれたC子さん。優秀な姉と兄を持ち、C子さんはどちらかというとのんびり屋でマイペースで、あまり勉強に興味を持つことが無く、絵を描くことが好きな優しい女の子でした。

姉も兄も大学に進学したのですが、C子さんは勉強が苦手だったので、保育士資格が取得できる専門学校へ進学しました。

父親は一代で会社を立ち上げた地元企業の社長。努力することを惜しまず、家庭ではすこし厳格なところがありました。

姉も兄も優秀だったので父の自慢でした。一方、父は「C子はねぇ、芸術家系だね…」とC子さんを否定することは無かったのですが、他のきょうだいへの言動と比較すると、自分に自信を持てずに劣等感を抱きながら大人になりました。無邪気な子供たちが慕ってくれる笑顔を見せてくれるたびに、自分への自信へ繋がっていったように感じたのです。22歳の時、おつきあいしていた男性との結婚をC子は意識したものの、相手の男性は結婚するつもりがなかったらしく、一方的に別れを告げられます。その後、その男性は同じ大学のゼミ仲間と結婚しました。

C子さんは24歳の時、お見合いで結婚しました。

相手の男性の穏やかなところに惹かれ、失恋からの痛手をまだ引きずる状況ではあったのですが、これで幸せになれると信じ、結婚を決めました。

子供が生まれると、夫は非常に子煩悩でした。が、仕事が忙しく、いわゆるワンオペ育児。しかも、夫の視線は子供ばかりで、C子さんに対しては興味がないような様子です。

育てづらい子供、ワンオペ育児。自分に無関心な夫。…そんな経緯が、C子さんを苦しめたのです。

もともと劣等感を持っていたC子さんにとって、「ありのまま」「そのままのあなたでいい」「すべては完璧」は大きな救いになりました。しかも、我が子は、インディゴチルドレン。

スピリチュアルがC子さんの問題をすべて解決してくれたと思ったのでしょう。

 

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かつてカモだった人がカモ猟師になるという現象は、スピリチュアルや自己啓発の世界ではよくある話です。クライアントだった自分が、やがてカウンセラーや講師になるというパターンです。

(自分がかつて苦しんだ、その苦しみを理解し共有できるのだから…)を売りにしています。確かに、当事者でなければ理解できない部分もあるでしょう。

ただし、C子さんはスピリチュアルにかじりついたものの、自分の中に在る根本的な問題(なぜスピリチュアルに飛びついたのか?)には気づいていません。

 

C子さんは、スピリチュアルカウンセラーというカウンセラー業で収入を得るようになりましたが、学術的なカウンセリングは全く学んでいません。そして、そのカウンセリング法は、クライアントが(見えない)(分からない)存在から、メッセージを届ける霊媒的なことをするために、ハマったクライアントはどんどんC子さんの所へ通うようになります。

 

斬り込み隊長のブログを読んでくれていた人なら、これが何だか分かりますね。

 

『依存』関係です。

 

(スピリチュアル)を介して、C子さんはクライアントと依存関係を築こうとします。クライアントは(救われた)と喜び、C子さんは(クライアントを助けてあげた)と喜びます。

この時点で、C子さんがクライアントのアイデンティティーを尊重していないやり方をしているということに気づかないと、カモにされてしまいます。

C子さんのクライアントの中には、C子さんが進める水やパワーストーンや健康食品やサプリメントなど、、、あらゆるものに手を出します。挙句に、アーティスト活動まで手を広げているC子さんの作品を買い、イベントに出向き、C子さんにすっかり傾倒している人もいます。

 

C子さんはこのようなクライアントの存在によって、自分の中の承認欲求を満たしています。

 

カウンセリングは、(できるだけ、早くクライアントを目標へ導き、クライアントの自立を促す)ことが大前提ですから、いわゆる本来のカウンセリングとは、全く違います。

 

私は、このようなスピリチュアルを用いた洗脳を「カウンセリング」と言える社会に問題があると考えます。医療機関やしかるべき治療機関で行われているカウンセリングとは全く違うのです。ところが、同じ言い方をする。「カウンセラー」という言葉も同様です。

 

(それ)が自分の周りに広がって、もう現実を見ることが出来なくなってしまった人が、目の前に起きている現実を見るのは非常に困難です。

スピリチュアルにすがっても、問題が解決できなかったり、逆に事態が悪化したり、そのようなことにならないかぎり、「自分の選択が間違っていたのかも…」と思う機会はやってきません。

 

ですから、私は、スピリチュアルにハマってしまった人は、そのまま放っておくしかないというしかないと言っているのです。

それが、その人の人生なのです。その人の人生を、その人の意思で選択し歩いているのであれば、ただ見守るしかないのです。